と、いうわけで前回の続き。
みちるに、じゃんじゃら鳴り響くベルを持ってこられたせつなは、当然のように、「時空の扉の護り手」として、困惑の色を浮かべ
て、そんなみちるの顔を仰いでいた。
はるかに吹っ飛ばされたかなたは、微妙に間に合ったんだか間に合わなかったのか、なんとも言えない状況で、
「こうなったら、せつな自身に頑張ってもらうしか………ないのかも、しれないな;」
と、その場を見守っていた。
「でも、これを………どこに飾れっていうの?」
「勿論、扉よ」
「……………………どこの?」
ちょっぴりややこしい話になるが、実はせつなは(注・勿論うちの設定上なのだが)本来プルートになるべき人間ではなかった。
いや、プルートには違いがないのだが、特殊な任務を持つが故に”死ぬことのない「時の女神」”であり、”セーラー戦士”でもあ
るプルートの、その緊急時(なんらかの理由で、死(厳密には力を奪われる、という感覚の方が近しいのかもしれないが)の代理 人としてのプルートとして、この世に生まれた魂の持ち主だった。
そうして、ミレニアムが再興する際の諸々やりとりの末に、「真のプルート」が深い深い眠りについてしまった為に、現在、その間
のプルート代行を行っているのがせつなだった。
だが、諸々の理由の末に、その任をせつなに一任したプルートは、せつなにあまり多大なる不自由があってはいけないと、
「この空間を好きに利用しても良い」
と、眠りにつく際、せつなに言づけていたのだった。
つまり、この空間になにかを置くのも飾るのも、それはせつなの趣味であり責任の上で行えると言うことである。
とはいえ、それは単純に、それまで普通の生活を外の世界で行っていたせつなに、この閉鎖空間で、ただ黙ってずっと暮らして
いろ、というのも酷だろう、というプルートなりの配慮から、この場所に、「自分だけの空間を作ってしまうことを許可する」、という 意味で残した言葉なので「=この空間を悪用しても良い」、ということでは勿論ない。
「えっと、要するに、私の部屋の話?」
だから、せつなはこの場所での唯一自分の空間とも言える、今自分たちがいるこの場所のどこかの扉をさして、みちるがそうい
っているのかなぁ、と…………希望的観測でそう応えたのだが
「嫌だわ。もっとすごいのがあるじゃない」
やっぱり希望を裏切ってくれる台詞を、明るく元気にみちるは返してきたのだ。
「それってまさか」
「あれV」
そういって元気に指を指したのは、空間の向こうにぼんやり浮かぶ「時空の扉」だった。
「…………だめよ;あれは;」
いくらなんでもそりゃだめだ。
あれは私の意志でどうにか………なるにはなるが、だからといって、やって良いこととまずいことはある。
「そうなのぉ〜?」
「そうです」
「いじわるぅ」
……そうか?
いじわるなのか?
そ〜なのか???
いじわるなのはみちるの方じゃないのか?
あぁ、でも笑顔には邪気がない(._.)
「ねぇ、クリスマスだけでもだめ?」
「…………う〜ん……」
可愛い顔をされてもなぁ………
で、困ったせつながかなたを見る。
「あ、あら?そ、そういえばかなた、いつからそこにいたの?」
「さっきからいたよ」
みちると同時にきたものだから、なんだかうっかりしていたが、そういえばこの二人はどうして同時にここにきたんだ?
あぁなんだか分からない。
「かなたさんも駄目?」
そうして、思わずそう振られたかなたは、当然勿論こくこくと頷いた。
「そうかぁ、やっぱり駄目なのねぇ」
「や、やっぱり?」
「うん、はるかが駄目だって言ってたから」
その一言に、せつなとかなたの視線が、ひっそりみちるの背後に立っていたはるかに注がれる。
ちなみにその視線の意味は、
『自分の妻の変な行動くらい、もっとしっかり止めろ』
というものだった。
で、とりあえず二人向けにはるかはこう返した。
『できたら俺もそうしたいんだが、この方は時々無理なんだ〜分かるだろう〜???!!!』
勿論、二人はそんなはるかに訴えに、揃ってため息を返した。
「とにかく、みちるの気持ちは嬉しいけど、これだけはだめ。ごめんね」
「う〜………ん。でも、それだとせつなだけお揃いじゃないから寂しい」
ってことは、はるかもか?
一体あの部屋のどこにこれを置くんだよ;(せつな&かなたの気持ち)
「じゃ、じゃぁ俺んとこに置く?;」
で、仕方がないので、かなたがそう答えると、
「でもぉ、かなたさんはこっちにいることの方が多いし」
それはそうだ。もっともだ。
だからみちるの認識では、かなたの家=ここ(=時空の扉)なのだろう。
「わ〜かったわ。あの扉はだめだけど、こちらに置くわ」
そう、時空の扉本体ではまずいが自分の空間ならば自室も同然だ。
ここならさして、問題はないだろう。
「ほんとに?」
「うん、ほんとよ」
「わ〜い、ありがとうせつな(^^)」
あぁ、結局今日も、みちるのペースだった……
「んで、真面目に飾るんだねぇ」
そんなこんなでみちるとはるかが帰ったあとに、かなたがため息をつく前で、せつなはせっせとみちるが寄越したベルを、自室の
扉……には取っ手が無かったので、仕方なく、臨時で扉に接着したのだった。
「だって、みちるのお願いって断れないんですもの」
「ははは;」
確かにね、みちるやまゆりにお願い、とかされたらば、たいていのことは(少なくとも身内は)聞かずにはいれれないだろう。
「でも、せっちゃんあんまり音がしてると邪魔にならんか?」
扉が動くたびにこれではしゃんしゃんなりまくってしまう。
根本的に、静かな場所を好むせつなには、それは少々邪魔ではないのだろうか?
「はるかが平気なら平気じゃないかしら?」
どういう基準だ?;
「いや、そうじゃなくて、そこに下げなくたっていいんじゃないか?下げるんじゃなくて、置くだけでも十分可愛いんじゃない?」
「そう?」
そう、せつな以前に自分が、そんなものが鳴っていてはどうにもこうにも落ち着かない;
勿論ここには、余計な風等が吹くわけではなのだが、それにしたって気にはなる。
なにしろでかいし光るのだ。
「う〜ん……確かにそうかしら……」
「きゃ〜〜ごめんなさ〜い」
しかもとてつもなくお約束なことに、そのベルは扉を開けようとしたカロンに、思い切り………落とされてしまったのだった。
「やっぱり下げるのは諦めて、置くことにしましょう;」
「あ、あら?そういえばせつな様、これはなんなんです?」
ちなみにこのベルは小柄で小顔なカロンの顔が埋まるほどに大きい。
「みちるがくれたの。クリスマスの飾りですって」
「わ〜綺麗ですねぇ。そういえば、ここって通常モードだとツリーとかないですもんね(^^)」
「あ、そういえば………」(せつな&かなた同時に)
そう、非・通常ということで、(動きの取りにくいせつなの為に)ここで、なにかしらの行事(例えばクリスマスなどもそうなのだが)
を行うときに誰かしらが持ってくるので飾りもするが、そうでなければ案外とここはシンプルな作りである。
「せつな様は、お作りになった物は、なんでもあちらに持っていってしまうから(^^;」
ついでに、ここで作った物は、概ね自宅(……?ともかく、みちるのいる家のことである。)へと持って行ってしまうせつなだった。
(じゃないと大変ことになるからね。)
「よし分かった、今年は俺がツリーをここに持ってくるよ」
「え?」
「大丈夫、小さいのにするから」
「わ〜ありがとう〜\(^o^)/」
「私も嬉しいです〜」
そうか、そんなに嬉しかったのか。
そんなことなら毎年ちゃんと用意してあげたのに……
「ふふ〜パパ、ありがとう♪」
「はい?;」
誰がパパやねん?????
「だって、あなたのそう言う所って「パパ」って感じなんだもの」
勝手にしてくれ(T▽T)
「俺がパパならじゃぁせっちゃんはなんなんだ?」
「娘、これ(カロン)次女」
「はぁ、時空の扉の長女と次女か;」
「そうそう(^^)ほらカロン、パパにお願いしておかないと」
「え、えぇ???なにをです?」
「えっと、クリスマスのお飾りと、お正月の準備」
ちょうど年始は忙しいので、根本的に何も出来ないし。
「あ、あぁ……」
とはいえ、かなたとは違い、根っからの付き星であるカロンにはそういった「年中行事」の概念は今ひとつ濃く根付いてはいない
ので、言われて始めて「あぁ成程」と、思う程度だった。
しかし、
「お願いします(*^^*)えと………ぱ、パパ???」
なにかが違う、何かが間違っている。
自分がここにいることがそもそも間違いなのかもしれないが、それにしたってパパはない。
俺には子供なんかいないんだぞ〜(TT)
「だめなの?パパ」
「もういい、分かった。言うこと聞くから、お前さん達のその攻撃はよして;」
まゆりはいいが、それ以外だと単なるいじめだ(TT)
「あら、気に入らない?」
「…………気に入るも何も………」
「んん?」
「まぁいいわ;んじゃ」
「わ〜〜〜〜〜なんで、それで去ろうとするの〜(><)」
「だって買い物して来いって、うちの長女と次女が脅すから。じゃぁお父さんはこれから街に買い出しに行ってくらぁ〜」
で、かなたが手を振りさる後ろ姿をぽかんと眺めるせつなに、
「せつな様、そこはかとなくかなたさん、ご機嫌斜めじゃありません?」
「う……うん…そうかも……」
で、よくよく考えて見たら、
「うぅ」
落ち込んできた……
「お、追いかけた方が良いんじゃありません?;」
「う、ううん、いいの……いいのよ(T_T)」
いいのだろうか?;
せつな様、微妙に涙目……なんですが?;(悲しい位に、わかりやすいなぁ……;;)
と、そこへ天からの声が響く。
「せつな〜無事か〜?」
声の主ははるかだった。
「はるかの馬鹿〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
せつなに馬鹿と言われるとへこむのは何故だ?;(はるか談)
「ど、どうしたよ?;みちるも結構簡単に折れたじゃんか?;;」
でも、なんとなく気になって声を掛けたのだが……
「かなたが怒って行っちゃったわよぉ」
それは誰のせいか、はこの際無視するせつなだった。
「お、俺のせいか?それは?」
「そうよぉ、ややこしいところに呼ばないでよぉ(><)」
せつな、逆ギレ?;
「いやだから、せつなの為を思って〜」
「いやいや、逆効果よ!」
なんでやねん?;
「分かった、ちょっとそっち行くから;」
そうして結局、いわれのない愚痴を聞きつつも、みちるとは違った意味で、そこはかとなくほこほこと「せつなは可愛いなぁ」と思
っていたはるかは、
「いつになったらかえってくるのぉ」
と、いうみちるの悲しげな声で、再び家に戻ったのだった。
「はい、只今娘達。お父さんがあれこれ買ってきたぞ〜」
で、しばらくのち、機嫌を直して(結局は怒りきれない人なので;)戻ってきたかなたに、せつなとカロンはとりあえず素直に謝った
のだった。
「もう、怒ってない?」
「怒るも何も、娘に手ぇ出す気ないし」
……………………はい?;
「なら、娘返上」
「あれ?そうなの?」
「そうなのっ」
あぁもうこの辺がかなたとはるかの違いだわ……(_ _)
とはいえ、やっぱり最終的にはお互いどこかでちょっとずつ、譲歩し合って仲直り、というのがこの二人のパターンだった。
「ねぇせっちゃん」
「ん?」
「今、表行ってきて思ったんだけど、小さい門松が結構可愛かった。こういうところは、今も昔も変わらないんだねぇ」
「そうねぇ」
基本的に、年末のどんずまりから年始にかけての自分の時間は、殆どないに等しいせつなと、それに付き合ってしまうここの住
人には、お正月飾りは本気で無縁の代物だった。
「今度はみちるちゃん、あれ持ってきたりして?」
「ま、まさかぁ………と、思うんだけど?;」
「だ、だよな;ははは;;ごめん、変なこと言っちゃって;」
しかし……………
「せつな〜見てみてミニ門松よ〜\(^O^)/」
かなたの予想通り(?;)クリスマスパーティの際にみちるがせつなに手渡したのは、小さな小さな、掌サイズの門松だった。
「ほんとは時空の扉の前に立てられたらなぁ、って思ったんだけど、やっぱりそれはまずいのかしらと思って……でも、これなら、
机の上に置けるから!」
どうしても、自宅と一緒がいいんだな;みちるは;;
否勿論、別れて暮らしている自分を心配してのことなのだろうが……
でも、ほんとにいつもいつもよくやらかしてくれるものである。
「ありがとう(^^;)」
「うん」
とはいえ、こんなみちるがいるからこそ、離れていても、ここにいても、あまりひどく閉鎖的な気分にはなれるのかもしれないな、
と改めてそう思ったせつなだった。
おしまい、おしまい(^^)
お待たせしたわりにはたいした物ではなくてごめんなさい。
いやそれ以前に、こんな約束覚えてなかったかな;
なんだか、気の向くままに走らせていると、あちこち勝手に暴走;
あぁ、なぜに時空組オンリーに等しい話になってしまったのかしらん?
でもね、やっぱり時空組は可愛くて好き、な長月でした〜(^^)
ではでは
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