大掃除終了と共に、行ってきま〜す、と家を後にするほたるとまゆりだった。
行ってきます、な二人(^^; 毎年の事です;
「今年はどこで見るんだって?」 「今年は北極に行くんですって」 「なんで北極?」 「さ〜あの子たちの行動は理解出来ないことが多くって〜」 そう言って首を傾げるみちるに、俺はお前が時々理解できないがなぁ、とはるかがこっそり思ったことはこの際伏せておくとして、 今年も大晦日には帰星をしていたはるかだった。 なのであるいは、そんなはるかにまゆりやほたるは気を使ってくれているのかもしれない、と思ったはるかだったが、いずれにし ても、今年もお節の担当がはるかとみちるであったことは事実だった。 「あの子たち永遠に私たちをお節担当にさせておく気かしら?」 「さ〜」 でも、確かにそうも取れなくはない。 なにしろ例年大掃除のあとにはどこかに行ってしまうのだから。(ちなみにその前は忙しすぎてみちるには掃除や準備はできな いのだった。) 「まぁいいんじゃない?こんな時じゃないと俺もこんな事出来ないし」 あまりにも出来る人間が多すぎてついでに自分は忙しすぎてやる機会がないだけで、ほんとは結構嫌いではないのだ、料理 は。 「そういうもの?」 「うん、そんなもの」 「ならまぁいっか。私もはるかと出来て楽しいし(^^)♪」 そうそう、あれこれ考えないのが一番、一番。 「ところでせつなは平気かしら?」 年末年始の時空の扉は、場所の特殊性故に、はるかたちではどうにも出来ない難しい時間を過ごしていた。 もっとも、昨今の世界はかなり安定をしているので、なにかが起こるとはそうそう思えないのだが、 それでも、せつなやカロンに言わせれば、それなりに細かいずれだなんだのはあるのだそうで、 二人にしか見えないそれを正常にしながら新年を迎えなければ行けない大晦日から元旦のせつなとカロンは毎年お節の準備も どこ吹く風の忙しさだった。 「なにかあったらこっちのも連絡はあると思うよ」 「そうね、ほたるがのんびりだから平気かなぁ」 領域的にそもそも自分たちに何かが出来るわけではない。 ならばむしろオールマイティに利く要素のあるほたるの方がまだましという感じなのだ。 「でも、明日にはこっちに来るわよね?」 「多分ね。かな、まゆりとほたるになんかあげるの趣味だし」 だから未だにお年玉をあげるのが趣味のような人なのだ、かなたは。 「なんだかいつも申し訳ないわねぇ」 「いいんだって、他にあげる人いないんだし」 なにしろみらいにもかなた自身にも子供はいないし、付き合いのある親戚筋がいないわけではないのだが、年始にいちいち帰 省は出来ないかなたの都合上、そんな贈物をする子供は二人以外にはいないのだから。 「でも、私はあげる人がいなくてつまらないなぁ」 まゆりやほたるだと、いかんせんいつものことと言った感じだし。 そうぼやくみちるにはるかが苦笑を返す。 「そう言ったって、いないもんはいないんだし」 ちなみに、自分の兄の子供(姪と甥)もいるのだが、そちらとはもういつが最後だったか思い出せないくらいに会ってはいないみ ちるだった。 「分かった、かなたさんやせつなやカロンちゃんにあげようかしらV」 「…………それこそ、お年玉って感じか?」 こんなに生きちゃぁいるがなにしろ、昔から二人とも年上なのだし。 「う〜〜〜〜〜ん、じゃぁはるかに!」 「…………いいって」 「え〜そうなのぉ?ほんとになんにもいらない?ほしいものなんにもないの?」 「特にないなぁ……う〜ん……」 「みちるちゃんの愛は?」 「…………あのな;」 「いや〜そんなにクールに見捨てないで〜」 いやそうじゃなく……急にそういうことを言うからいかんのだ、頭がついていかん。 「ほんとにいらないの?」 ってだから〜そこで勝手にしょんぼり黒豆に横一直線に並べたりしていじけるなよ〜(T▽T) 「いるから、ものすんご〜〜〜くいるから、それは」 「ほんとに?」 「あぁもうほんとにほんと」 「言い方が軽いから信じられない」 いやだからって栗きんとんを潰すなよ〜 潰したらただの栗ペーストになっちゃうじゃないか〜 「分かった、どういえばいいの?」 「う〜〜〜〜〜〜〜〜ん」 栗はとりあえず被害二個ですんだものの、今度は数の子が…… 「頼むみちる、細かく切りすぎないで;」 食べた気しないから。 「じゃあ、はるかが私にお年玉を頂戴」 「はい?」 「みちるさん、お金はいらないから、はるかさんに遊びに連れて行ってほしいな(^^)」 そう言って、「デートデート〜」とはしゃぐみちるに 『いつまでも若くて可愛い嫁さんというのは難しいそうだが、うちのみたいなのをいうのかもしれない』 と、しみじみそう思ったはるかだった。 (注:とはいえ自分だけ年を取っているようで、それはそれで物悲しい部分もあるにはあるんだぞ(はるか談)) 「分かった。ほたるたちが帰ってきて、せつなとかなも来たら、そのあとどっかに行こうか。でも、みちるの方の仕事は平気な の?」 自分とは違い、ミレニアム本体の仕事を直接行っているついついそう聞いてしまったはるかにみちるがにっこりと微笑む。 「それなら大丈夫。私の部下さん全員有能だから、私がいないでも平気なの」 「そうなんだ?」 「うん。だって、そうでなかったらそもそも今日だってここにはいないと思わない?」 「それはまぁ」 でも、そういえば例年みちるの正月はのんびりである。 「でもでも、せっかくだから、はるかもたまには顔出す?」 滅多にはパレスに赴くことのないはるかだが、まぁみちるの部下当りには特に差し障りはなく逢えるはるかである。 「でも、それってデートかいな?」 「そ〜れが、実は結構綺麗なのよ〜あすこの夜景。はるか、来るとしたら日中だから知らないでしょうけど、なかなか素敵なの。 知っているのは限られた人間かもだけどね」 「へ〜」 「よし、そうしましょう。仕事もさぼらないで済むし一石二鳥だわね」 「それは良い考えだ……ってちょっと待てい、さぼっているんかい;」 別に悪いと言いはしないが…… そもそも仕事に関しては別人格なので、相手の仕事にあまり細々言わないようにはしているのだが…… 「あ、言い方が悪かったわね;私はお休みずらしてもらっているの。みんなが揃うことは滅多にないから」 年間でいえば、全員が揃うのはほぼ盆暮れ特殊行事程度なので、はるかやせつなが長時間いるような時には極力戻るようにし ているみちるだった。 そうしてこれは、みちるの周りの人間も納得していることだった。 「そういうことなら……じゃぁついでだからたまには挨拶でもしとこうか」 「わ〜そうしてあげて〜みんな喜ぶわ〜」 滅多には人前に出てこないはるかだが、それゆえかレア度の高さゆえか、(この辺は昔のままなのかもしれないが)実はそれな りに、もててはいるのだ、みちるの周囲にも。 「喜ばれてもなんもせんぞ」 とはいえ、人見知りなのも相変わらずなので、苦笑しながらそう答えたはるかに、みちるがにっこり微笑み返す。 「いいのよ、なにもしないでも。ただ顔を出してあげるだけでも、みんな嬉しいんだから」 「そういうもの?」 「そういうもの。だって、それが良いか悪いかは微妙だし、クィーンほどではないけど、でも、普通の人たちにとっては私たちって どこかしら、何かしらの象徴だったり憧れなんじゃないかな。だから、なんとなく声を掛けてもらうだけでも嬉しいみたい」 「それってやりにくくないか?」 その点、一人で仕事をしているはるかにはない気苦労なんじゃなかろうか? とそう思うはるかにみちるは苦笑しながらもこう答えた。 「勿論私も、自然にみんなに溶け込んでいたいって思ってる。でも、そう感じることでみんなが頑張れるなら、ある程度はお互い 様。私だって、みんながついてきてくれるんだって思うから色々やれるんだしね。それに、はるかみたいに放置しているとほんと に神格化されちゃうわよ〜」 「成程……それはそうかも」 「自覚なさい、自覚を」 昔っからそうなんだけど、はるかは。 そう言ってため息をつくみちるにはるかが思わず吹き出す。 「まさかみちるも?」 「え?」 「い、いや……」 ちょっぉっと逢えないと色々溜め込んでいるのか飛びついた来たりするからにているのかなぁ、とかなんとかかんとか…… 「あら、分かった?」 「へ?」 「放置はいけないわよ、放置は。みちるさんも人の子ですから」 「はぁ……そうでしたか」 てっきり妖精かなんかかと思ってました。 「だからね、迷える子羊みちるちゃんにも愛の手を」 「合いの手?」 「うん、も〜〜〜〜〜〜」 「嘘嘘。そんな安いお年玉ならいくらでもあげるよ」 「わ〜い」 「でもその前に、こっちを片づけような」 「うんうん」 とかなんとか、除夜の鐘もなんのその、延々こんなやりとりをしつつも、地球の自宅の大晦日は過ぎていくのでした。
一緒にお料理、というのはほんとにこの時位ですね;
一方その頃時空の扉、というかせつなの職場である、太陽系の時間軸を管理する空間の一角では、ようやく迎えた新年(シル バーミレニアムのある地球基準になるのだが)を迎え、ほっと胸を撫で下ろしているせつなの姿があった。 「せつな様、あとは大丈夫ですから」 そう言って微笑むカロンにせつなも微笑み返す。 「お疲れ様はお互い様。あなたこそ少し休んで」 自分はこの後少しだけ、こちらを離れるつもりだが、カロンはそうはいかないのだから、とそう思いそう返したせつなだった。 「お疲れ様です」 「あ、うん」 と、そこで、この空間の半同居人のかなたがお茶を持って現れた。 「あっつい日本茶」 「わ〜ナイス」 紅茶も珈琲もいけるのだが、今は日本茶、そんな気分だったのだが……うん、ほんとにナイスな人である。 「かなたさん、後は宜しくお願いしますね」 なにをお願いって勿論自分の大切な主であるせつなのことなのだが。 「丁重にお預かりしますね」 「も〜なんなのぉ、その仰々しい会話は〜」 とはいえ、せつなには分からない感覚なのだろうが、本来のせつな世話役はカロンなのだ。 しかもカロンはオンリーワンの付き星でもあるのだ。 だからカロンが普通の付き星以上に主に対する思い入れが強いのは仕方のないことだった。 でも、それとせつなの意志はまた別な所にあるので、せつながそう言った感覚とはまったく別な部分でかなたを必要に思ってい ることはカロンには(カロンだからこそ?)良く分かっていたので、そんなせつなの希望を出来る限り叶えたい、と主第一のカロン はそう考えていた。 しかし、そんなカロンと同じ立場にあるかなたとしては、自分もまぁ、それなりには似た立場にはあるので(カロンにとっての自分 は、自分にとってのみちるかなということ)カロンの気持ちを無視してまで、少なくともこの空間でせつなを独占する気はないのだ った。 いや以前に、この場所にあるせつなは、やはりどこかしら自分とはまったく違う時限の存在なので(それを言えば本人が嫌がる ので口にはしないが)あくまでも頭のどこかで、せつなの立場、カロンの立場そうして自分の立場を意識してしまうのだった。 「仰々しいのもお仕事のことも一瞬隅にやりましょう」 しかし、当の姫はこれである。 何年・何百年この空間にあっても、いやそれゆえにか、元来の性格に姫属性があったからまだしもましだったのかもしれない が、仕事中だろうと仕事場だろうと、いつもいつでも、自分たちのことを家族としてしか扱おうとはしないのだった。 もっとも、だからこそこんな状態でいられるんだろうけど…… 「ねぇカロン、それよりなんだか眠くない?」 「はぁまぁ多少は……」 でも、私はそう極端には疲れることはないしなぁ、とそう思うカロンに、 「いいなぁ、カロン若くて」 ちょっぴり意味不明な返答を返したせつなだった。 「じゃぁ帰る前に少し休んでいけば?」 何分年末年始は不眠不休で空間管理をしなければならないので、負担といえば確かに普段以上に負担があるのだ。(特に、実 質的権限と行使力を持つせつなは、アシストであり聖霊に程近いカロン以上に神経を使うので) 「う〜ん、じゃぁ一時間、眠らせて?」 「あいよ〜一時間たったら起こしますね」
つ〜かそのまま人によっかかって寝るんかい?
「せつな様って、なんというか……大物?;」 「カロンちゃんがそれ言ったらおしまい;」 でもこのせつなの危機感のなさは、それはそのまま自分たちに対するせつなの信頼の証なのである。 「でもかなたさん、私も、そういうせつな様を見ているとなんだか和むんです」 以前の主であり、本来のプルートとも言うべき人がこうではなかったことをもっともよく知るカロンのその言葉に、かなたはなんと 応えたものか、と考えた。 「それで、時空宮の守護者としてはいいの?」 「いやだったらとっくにそう言ってます。それに、せつな様が幸せなら、プルート様のお心も同じように平穏なんでしょうからね」 成程、そういわれてみればそうか…… 「だから、かなたさんがせつな様を不幸にすると、プルート様も不幸なんですね。重罪です」 「お、おいおい」 可愛い顔で時々本気こんな釘の差し方をするカロンちゃんってやっぱり根底付き星なんだなぁ(人のことは言えないのかもしれ ないが) 「あ、でもでもかなたさん、今年もそんなわけで宜しくお願いします」 「あ〜そうだそうだ。こちらこそ、宜しくね」 「あの、それで早速なんですが一つお願いしてもいいですか?」 「ん?」 せつなは本気でかなたにもたれてすやすやと眠っているのだが、こんなことはそれなりに良くあることなので、二人は構わず会 話を進める。 「私、はるか様の茶碗蒸しが食べたいんです〜」 「はい?;」 先日のせつなのBDで作ったそれがえらくカロンの舌にあったから、というのが理由らしいのだが…… 「俺んじゃだめ?」 作ってるか微妙なので。 「う〜ん同じですか?」 「いや、た〜ぶん似てると思うよ。天王家の味だから」 「ならそれでもVわ〜い楽しみです〜お年玉ですね〜」 お年玉ではないと思うのだが……ま、まぁいいか。 「お節セットちゃんと持ってくるね」 「茶碗蒸しだけでも平気です」 「いやいや多分はるかとみちるちゃんで頑張ってるだろうから、俺がいわんでもちゃんと用意してあるよ」 「毎年済みません」 そう言ってぺこりと首を下げるカロンの頭をよそよしと撫でる。 「カロンちゃんは、はるかたちにとっても家族と一緒なんだから気にしない気にしない。というかさ、俺たちが思ってるのとあちらが 思っているのはちょっと違うからね」 「そうなんですよねぇ……」 「でも、これはこれで幸せなことだよ」 「はい、私もそう思います」 良い主について良かった、まさにそんな感じである。 「じゃぁかなたさん、私たちも皆さんと私たちの平和の為にも今年も頑張りましょう!」 「そうだね」 「でもとりあえず、せつな様は宜しく」 「はいはい」 「泣かせたら、恨みます」 「うっわ〜」 ちなみに年中喧嘩をしては泣いているような; 「あとついでに、お手伝いも宜しく」 「注文多いねぇ」 「はい〜だってかなたさん、こちらのアシストですから〜ついでなんでもっと色々覚えてみますか?こちらの仕事なら私でもご教 授出来ます!」 「い、いや結構です;」 職種が異なりすぎて理解出来ても実行できん。 「ウラヌス様の所をリストラされたらいつでも、いらして下さいね。プルート様も歓迎だと思います」 ………………………昔からそれは言ってたな、確かに。 「で、でもなカロンちゃん、そこだけは早々ゆずれん」 「そうなんですか〜残念です〜」 まったく、時空宮のお二人は本気で困った人々だ……(せつなはその辺きっちり、無理だと割り切っているだが。) 「まぁとにかく一時間後、姫をちょっと借りるね」 「はい」 「それまで、カロンちゃんも少しお休み」 「はい、じゃぁそうさせて頂きます」
すべての人に平穏を
時空の扉より愛を込めて、平和の祈りを込めて
おしまいおしまい(^^)
ちょっとだけ誤字は修正; でも、これが年賀用という我が家の年賀状はなんだか毎年変な感じです〜ははは |