63:彼のネクタイ彼女のルージュ


思えば自分の周りには小さな頃からいわゆる「普通の会社員」、と言う物がいなかった。

そもそも両親は自営業だし、それもなんだかやたらにのんびりマイペースな印象だった。

自分がしていた職業も「会社員的」、ではあったがあくまでも会社員的、だった。

なにしろ最初の仕事の周囲の大半は、学者か白衣の人間が(同じというか、兼任というか、ではあったが……)殆どだった。
次に就いた職業は、公務員だけどいわゆる教員職で、しかも小学校。
これもまた独特。

ようするに、いわゆる普通のオフィス(白衣に着替えて薬品まみれとか、ジャージに着替えて運動、とかではなく)に通っている
人間との関係が……なかったんだよなぁ……


で、唯一がこれか……と、ふと目の前で着替える人をぼーっと眺めてみる。


うとうとしてたらどうも、その隙に出掛ける準備をしてしまおう、という魂胆なのかいそいそ着替えているようで……


ふう……ちょっとつまらない。


そういえば、会社員らしい人がいなかったわりには、かなり特殊な仕事の人は反対に多かった。

はるかやみちるに関して言えば、そもそもなることが出来て、さらに蔵なりなんなり建てるくらいの勢いで〜
いや、ともかくそれで余裕で暮らせる人間、とかいうのになることが出来るだけでもごく稀な職業だった。
世界レベルで考えても。



まぁあまりそうは見えないのがあの二人なのだけれど。


ちなみに、頭だけなら自分もそうなれたかもしれないけれど、自分、名前が出るのが嫌いだったしなぁ………


ほたるとかどうだろう?



なんか、あの子ってなんでも出来そうだけど、どちらかと言ったら私系なので、はるかやみちるの方向にはいかないだろうなぁ



でも、共通して言えるのは3人ともど〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜考えたって一般会社員は無理だろう、ということだ。

みちる……とにかくなんというか、ペースが違う。今でこそそれっぽい感じだけど、でも、あすこじゃみちるが一番上だしなぁ
       ようは下っ端なOLさんにはなれない感じ……なんだか周りも申し訳なくなる何かがあるしね;

ほたる……輪がかかってそんな感じ。あの子、やるならいきなり社長の方がいいかもしれない……
        社員ついていけるかかなり疑問だけど;……その前に本人がほしがらないか。

はるか……多分ぎりぎり妥協できそう。なんだけど……あの子も無理ね。試して1週間も保たなかったらしいし。
        それとも、あれは実家だったからかしら?具合宜しくない時期だったからかしら???
        でもやっぱり、止めた方がいいわね。
        みちるとかほたると違って、本人が可哀想な気がする;(二人は周囲が可哀想な感じなのに、なんだろう、この差 
        は?)まぁ、いざとなったらこの人が食べさせるだろうしなぁ……うん……


でも、そのわりにこの集団の中で育ったまゆりはなんとかなりそうなのが激しく不思議だわ………


とはいえ、じゃぁ唯一のこの人が一番向いているかと言えばそんな気もしない。

一般的会社員として生きよ、と言われたら多分器用な人なのでそれも可能な人なのだけれど、基本的には、欲のない人なの
で、なにかこう無駄に必死に働こう、とか出世しよう、なんて意識のひっく〜い人だ。



なのになぜか当時の日本の企業のトップの………御曹司………だったのか……これは。

そういうと、なんだかちょっとかっこいいかもしれない。

でも、あくまで気だけ。

だって最初に逢った時からはるかの兄という印象だしなぁ……

なんだか「道端でふっと逢ってしまってご挨拶しちゃった友達のお兄さん」的印象なので、まるっきり普段の感じが最初だったせ
いか全然そういうイメージが沸かないのよね。(一応それっぽい人間は、実家にもどればごろごろしていたので、基準値も人とは
元々違ったのかもしれないけれど……)


でも、知ってもなんだかず〜っとそういう兄ちゃんイメージの人だったんだよなぁ……

こんなことをしていて、こんなところに勤めていて……と、分っていても仕事をしているイメージが、ぜ〜んぜん沸かなかったの
だ;

でも良く考えてみたら、なんだか年中忙しそうだってけど……逢っているときに仕事のこととかの話は滅多にしない人だったから
かもしれない。



「あのさ、寝てるんでしょうか?起きているんでしょうか?」

「ん???」


「じじ〜っと見られていると、さすがに多少は気になります」

「あぁ……半分くらい寝てます」
「そうですか(^^;」

でも、じゃぁ関数の計算しなさいとか言われたらできそうだけど……

躯が寝ていたいようだ、どうも。


「じゃぁ、もう少しちゃんと寝てなさいな」
「う〜ん……でも、行くんでしょう?」
「うん、まぁ一応」

ほとんどここにいるようで、でも、時々はそうじゃなくて。

で、今回の場合は2・3日と言っただろうか……

「起きるわ」
「いいよ、寝てなさい」
「うん、でも起きる」


いないと寝ない私のことを知っているので、多分寝ているうちに行ってしまおうと思ったのだろう。

起きていなったことを例えば私が怒っても、自分がいない間、私がずっと寝ないでいるよりは、いるつもりで少しでも長く寝かせて
おいたほうがまし、くらいのことを考えてしまう人なので……


「今ふっと思ったんだけど」
「ん?」
「私達の母星には、聖霊達がいるじゃない?」
「あぁ」
「あなたのとこにはいないのかしら????」


一瞬考えて


「いいるわけないだろう」
「え〜いないの?いたら面白そうなのに」
「ど〜面白いんだよ」
「ここに連れて来ちゃうの。そしたら楽しそう」
「もしもし?」

はるかのところがあれだから、じゃぁこの人の場合はどうだろう?

こっちの姿がなんとなくイレギュラーな気がするから、記憶のそこから持ってきた感じで〜考えると〜

「結構可愛いんじゃないのかなぁ」
「せっちゃん、やっぱ寝た方が良いです」
「う〜……今度探しに行こうかしら」
「ほんとにいないからやめなさいって。あれは、あなた達だけの特典、というかオプションだから、俺等にはいません」

そこが聖なる星とその僕の星の差なのだし。



そうして着替の途中で隣に腰を下ろす。

ぼんやりソファーに座っていたので、そのままちょっぴり引っ張られたら、そのままきゅうっと……

あぁいけない、眠気が……

「こらぁ、ここでもう一回人を抱えて寝るなぁ〜」




そういえば、あまり会社員のイメージのなかった人だけど、ほんの少しの時間、そうほんの何日かの間だけれど、ずぅっと傍にい
たことがあって、その時にやっと実感したな……って思ったことがあったなぁ……


朝「いってらっしゃい」っと見送ると、夜に「ただいま」って帰ってくる。

はるかは出たらなかなか戻らない仕事だったし、みちるも不定期な仕事だったから、朝こんな風に毎日スーツに着替えて出て行
って、その日の夜に帰ってくる人を、私はそれまでしらなくって……

でも、そういう普通の朝と夜と日常が巡る普通の生活が、私にはとても遠いことで……


あの頃より今の方が多分きっと長い時間を一緒にいるはずなのに、それなのにどうして、時々とてもあの時間が懐かしく思えて
ならないんだろうか……


「もしも〜しせつなさ〜ん」
「ん?なによぉ」
「なによって台詞は俺が言う台詞じゃないんでしょうか?寝るだけならまだ妥協するとして(いつものことなので)ついでに泣かん
でくれませんかね;あんまり時間が無いんですよ」

そのまま放置ではさすがにでてけませんがな、と苦笑されてしまったので、これは参ったなぁ〜そんなつもりじゃなかったのに〜



と、目を覚まして……開いて………


「わ〜〜〜〜〜〜〜〜〜どうしょう〜〜〜〜〜〜〜!?」




「あん?…………はぁ……



がっつり抱きついていたのはいいかもしれない。

それは別にどうでもいいだろう。……………………………今更

でもより問題なのは、なにが哀しくてこんな事故が起きるんだよ〜なことに、着替えたばかりのシャツにしっかりくっきりルージュ
の後が〜…………物の見事にしっかりと(号泣だ〜(TT))

「き、着替えて着替えて」
「いや、まぁもう良いって。着替持ってきてないし、時間もないし」

「でもでもでも〜(>□<)」
「いや、他の人のじゃまずいだろうけどそうじゃないし;」

いや、そういう問題ではないだろう。

と、なんだか余計に哀しくなってきたせつなの前で、少々困りつつもネクタイを締めつつ

「ほれ、見えまい?」

あぁまぁ確かにね、なんだか隠れましたね。

ではなく

「そ、そ、それで行くの〜?」

確か、今日は会議だか会合だかなんだかかんだか……

「あぁ、でも知ってるのせっちゃんだけだし。なら別に問題なかろう」
「うぅ……」

「はいはい。まじで行くね。俺普通にしか移動出来ないんでまずいんだわ」
「うん、そうね」

飛ばしてしまうのは簡単と言えば簡単なのだが……

「じゃぁ」
「うん」
「ちゃんと待ってるように」
「うん」
「ちゃんと寝なさいね」

「う〜ん……」
「はい、おやすみ」

「うにゃ?;」


普通行ってきますのキスだろうに、ここではおやすみなのか????

「変変変よ〜」
「ははは、まぁまぁ臨機応変ってことで。うちはこれでいいんでしょう」

「う〜ん」

「はい。とりあえず、寝てるにしても起きているにしても元気でね。無理はしないように」
「うん」


「いってらっしゃい」
「おう」


玄関ではないけれどまぁ、扉は扉か(笑)

「良い子にしてたらなんか楽しそうなものでも見つけてくるね」
「は〜い、あ、ちなみにBDまでには戻ってくるように」
「はいはい分りました」





と、以上、そんなこんなの普〜〜〜通の二人の日常でした。





微妙にテーマに対して強引だったかな?;
でも、本日7月21日はかなたくんBDなのだ〜おめでとう〜
ま、ひっくり返せば理由は一目瞭然なのですが。

そういえば、この二人は、あまり書いても分かりにくかろう、と表だっては非積極的;
個人的にははるかやみちるとは違った物が一杯あって、
ややこしい部分もそうではない部分もあって面白いのですが。

で、この100課題の場合、どうしてもこっちの二人じゃないとクリア出来そうもないなぁというものが一部あって;
(職業柄とか性格上とか諸々)これもその一つでした。

はるかには殆ど関係ないもんな、タイとか;

でも、長月的には男性のスーツ姿は大好きです。
スーツもジャージも着物も着こなせる男
というのが理想です。ふふ


お付き合い下さった方・お読み下さった方ありがとうございました。


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