6:ぶっちゃけ話

わかっちゃいたけどアホですね、とか言う感じの日常話。



リフォームでなにかが変わることを、少しは期待していたのが、実際にはそんなに大きな変化は感じられなかった。

と、言うのもせつなが壁向こうに移ったことが大きな変化になるかと言えば、元々家にはいないことの方が多かったので、「扉」
の外・「家」の中、で会う機会は確実に増えたが、それ以上に一緒にいられない時間の方が長いので、これはそう激しい変化と
は思えなかったし、かなたが壁一枚向こうにいることも、こちらは逆に元々せつなより頻繁に逢っていたので、せつな以上に大き
な違いをほたるが感じられなかったためである。

「結局、今回のスーパーリフォームってなんじゃったのやろ?」

と、言うわけでよせばいいのに、なんとなく隣家であり、隣室である、せつなとかなたの居住区へと一人暇つぶしも兼ねて遊びに
行ったほたるだった。



「やっほ〜」
「お〜」
「いたんだ? 珍しいじゃん」
「まぁね。たまにはいますって」

一応仕切はあるのだが、寝る時(さすがに寝る時だけは、一応はある襖で寝室だけが仕切られるのだが)以外は、どこで誰がな
にをしていているのかが瞬時に分る、いわゆるワンルームマンションのようなデザインに、こちら側の2階の間取りはデザインされ
ているのだった。

「あぁな成程ね、せっちゃんもいるのね」
「成程ってなんじゃいな……あ、それよりほっちゃん、俺は今身動きが取れないから、お茶とかおやつとかはご自分でどうぞ」
「セルフサービスですか?」
「うん、今の時間はセルフサービス。冷蔵庫とかを勝手に漁って下さい」

分りやすい人、といえば分りやすい人だ、とは思っていたのだが……

「セルフはいいんだけどさ、やりにくくないん?」

別にお腹が空いたから来た、というわけではないので、セルフだろうとなんだろうと構いはしないのだが、

『成程、だからセルフサービスタイムなのね』

と、部屋に一歩踏み込んた途端にかなたが「セルフサービス」と言った言葉のわけに気付いてしまい、少々頭痛を覚えてしまっ
たほたるだった。

「やりにくい? あぁ……あぁ成程!」
「暢気だねぇ。君は」

気付かなかったのか? あたしに言われるまでそのことに?

てか普通、仕事をしている時に脇で他人が転がっていて、というところまではまだしも(疲れてきたら少々ムカツクやもしらんが、
まぁそれは横に置いておくとして)仕事をしてる時に腕をひっつかまえられている姿勢でやれるということが、そもそもあたしには
謎だよ。

「いや。慣れれば特に問題はないみたいだよ」

みたいだよ、みたいだよ、みたいだよ……はぁ、そうですか。(ご馳走様です。)

「でもさ、片手でキーボード打つってかなり効率悪くない?」

なにしろ今のかなたくんは、左手を小脇でにこやかに眠るにせっちゃんにがっつりしっかり捕まえられているの状態なのだから。

 ← こんな感じ


「あぁ……俺、片手打ち早いし、慣れてるし」

確かに……早そうだな。

いや、目が画面、片手せっちゃん、で自分と会話が成立してて、尚かつ右手で書いたり打ったり……っていうのは、頭が悪かっ
たらそもそも無理だろうな。

しかも、確かにこれに慣れる程度には頭も良いし、器用な人間ではあったよな、かなたくんは。
(やっぱりせっちゃんにはかなたくんで丁度良かったのかもな、と改めて納得してしまったほたるだった。)

「慣れる前にさ、せっちゃんに言ったら? 仕事する時位はくっつくなぁって」
「お〜〜〜〜〜〜〜〜昔に言ったような気がしたようなしないような……気がするんだけど、そうしたら色々面倒でな」
「ん?」

と、ここでようやく顔がこちらに向けられたのだが、それ以外はそのままのかなたに、ほたるが首を傾げる。

「俺の仕事をしたい時間と、こっちの休みって重ならないから、二人で合わせて休もうとすると無理があるんだよ。で、とりあえず
マイペースになったんだ」
「マイペース……ですか?」
「うん、そう。好きなように自分のペースで」
「お二人のマイペースは邪魔とは被らないんですなぁ」

嫌みじゃなくて、あたしは本気で呆れて参りました。

「邪魔……あぁそう言う時はさすがには声を掛けてみるけどね、うん」
「例えばどんな時?」
「例えば……そうだなぁ……さすがにトイレに連れてくのは無理だなぁ、とかそういうこと?」
「それは無理とか邪魔以前でしょうが」
「あぁ。そうだよなぁ邪魔以前に変だよな、それじゃぁ」

変とかなんとかではなくって……てか、その乾いた笑みの意味はなんだんだ? ……と、思ったのは忘れよう。

「ねぇ、かなたくんって、一人になりたい時ってないの?」
「あるぞ、その位俺にだって」
「え? あったの?」

それは結構意外だ。

「すっごい修羅場ってる時は、さすがに一人の方がいいかな、と思うぞ。俺だって」
「お〜そうかそうか!まだいくらか人並みだね!」
「なんじゃそりゃ」
「だってかなたくんって、いっつもこんななのかと思ったら………お母さん少し心配になってきたんだよ」

そうよそうよそうなのよ!
一緒の敷地に住んでみて、そんなに大きな変化は感じなかった自分だが、唯一気になったのがこの二人の、この飽きずによくも
まぁ一緒にいるな〜というか、ひっついているな〜というか……とにかくそんな部分だった。

「俺の母はほっちゃんなんかい」
「いやさっきのは言葉のあやとしてもさ、なんというか、ちょっとは気になったのよ」
「あぁ……それはどうも」

お礼されるとこでもないと思うのだが?


「でも、そんなに心配されんでも、実際はそんなでもないと思うんだけどなぁ」
「そうかなぁ」
「だって、あっちでは俺、特別カロンちゃんみたいになにかが出来るわけじゃないじゃん? だから一人でいることの方が多いん
だよ」

言われてみれば、確かに二人を待ちながら自分の表の仕事をしたり、あれこれ二人の世話を焼いている、というのがかなたくん
の日常らしもんな。

成程、そういう意味では四六時中一緒ってわけでもないのか。

「それに、一応は、そんなに甘やかしてもなぁ〜とは思っているぞ」
「思っているだけなんじゃん?」

ちょっと言葉に詰まったということは、それって真実なわけね。
まぁ、そうも考えられなくなったらそれはそれで問題だろうし、かなたくんの立場で言えば、ある意味それは、とてもまともな意見
なんだけどね。

「で、結局ほっちゃんは、だからってことで俺のこと怒りたいんか?」
「怒られたいんかね?」
「いや……」
「だったら聞かないでくれる?」

怒ることとか注意をすることは簡単だろう。
普通の意見、普通の規律として、サターンなりの立場であれば。

でも、そのことのメリットなんて思いつかないし、デメリットの方が多いし、自分自身「大義名分」なんて物は、今更不要とも思って
いるので、あえてそんなことを言うつもりは毛頭ない。

「とりあえず、どっちにしても今は俺が仕事中でせっちゃんがお休み。で、休みの時はお互い好きなようにすることにしているし、
仕事の邪魔はお互いしない、ってことになっているから、今はこれでいいわけだ」

= 要するにこのせつなの行動にはなんにも問題なし。

「大体ぶっちゃけ、この人を一人でおいおく方がやだし」

しかも、一緒にいることをせつなにかなたが強制していないことは明白。

= ここにせつながいるのは自分の希望。

とは言え、こんな風に言い方を変えることで、無意識にかなたくんがせっちゃんをフォローして(=庇って?)いるのだ、と言うこと
に、果たして気付いているのかいないのか……

いないのかもなぁ……

でもなんにせよ、一緒の敷地に暮らすようになって始めて気付いた部分も多々あるこの二人のバカ……いやいや仲の良さを再
確認させられたのは、今回のリフォームのおかげだった。
(おかげであたしとみちるちゃんは目眩がしそうだが……これはまぁいいか。)

「あぁもう好きにしてください。ぶっちゃけ呆れているんでなんにも言いたくないのです。と、言うわけであたし帰るねぇ」
「ちょっとほっちゃん!」

なにしてるわけでもないのに(そう、みちるちゃんと違い、おとなしい分文句がいいにくいのがせつななのだ。)やたらに発される
二人のいちゃいちゃオーラに、一人で対抗するのは疲れるのだな、うん

「わ〜ほっちゃんがいじけたらしいぞ〜」
「ちがわい。呆れてるだけだい!」

「うるさいわよぉ……人がせっかく気持ちよく寝てるのにぃ」

あぁお姫様復活。
こりゃ本気で退散しようかな、うん

「あ、ほたるだわ〜こっちいらっしゃいな〜」
「いえ、帰ります」
「なんで? ここ、ほたるのおうちでしょう? どこに帰るの?」

あぁそうだった今度はそういうことにもなるのか〜

「逃げちゃ駄目よ」

にっこり。




で、結局3人で過すことになってしまったほたるだった。

嬉しいのか哀しいのか、まゆりじゃないので、ちょっとこの状態はつまらないような。


ただなんというか、はるかやみちるといる時にはない、びっみょ〜な寂しさをこの二人と一緒にいるときに感じてしまうのは事実
だった。



とはいえ、こうしてここに二人が揃って住むようになったからこその、平和と言えば平和な午後の一時はほたるもそれなりに楽し
んだのだった。





「そっか、変化なんて案外、こういう些細なものなのかもな」

ちゃんちゃん
おしまい♪





とりあえず、そんなこんなで仲いいんですよ〜を書きたかったので。
はい

オンでもオフでもこんな感じが真の姿〜なのさ〜……ちゃんちゃん



あ、でも、別に二人に感化されて(?)ほたるが自分も連れがほしいぞ〜
ということにはならないのでご安心を(^^);

まゆりでいいしょう、うん

では

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