1.どうしようもない

で、結局見ている人・付き合っている人が馬鹿みるんですよね。と、そんな感じで第二夜。



なにかあると呼びつけられるのは、概ねいつものことだった。

まぁただ、自分には自分なりの責任みたいなものがあると思うし、なによりかにより、多分間違いなくこの二人の幸せを一番に
望んでいるのは自分だと思うので、付き合うことそのものは嫌でもなんでもないのだが……


「頼むから落ち着いて、もうちょっと分るように、話を聞かせて?」

みちるの「分かりにくい」は、みちるの感性が独特すぎるがゆえなので、これはもうある意味常人の(?)自分ではどうにもならな
い部分のような気がするのだが、せつなの場合の「分かりにくい」は、話せば話すだけ、話の内容がこんがらがっていくことが原
因のようだった。

そうしてそれは、自分のように(あぁそれはそれで情けないなぁとは思うのだが)言葉が不自由だとかなんだとかではなく、なん
というか……分りやすく言うと照れ………なのか?それが邪魔をするせいらしかった。

「あのね」
「はいはい」
「えっと……」

とはいえ、可愛いいのには……違いないんだよなぁ……
あぁ、せつなは素直にそう思えるなぁ……
冷静に見ることができるということは、こんなにも感覚が違うもんなんじゃろか?
いや、そういうものでもないと思うんだけど……

「そ、そうだわ。はるか、今のあの人のこと分る?」
「かなのこと?」
「えぇ、そう」

一見すると、ちょっとおかしな日本語にも思えるこの表現も、これはこれで正解なのだ。

だってなにしろ、自分とかなたは、そもそもが精神的に常時どこかでどこかが繋がっている状態=多分誰より身近な「自分では
ない自分」なので、普段は(それでは色々ややこしい感じがするので)暗黙の了解で相手の細かな感情の情報を遮断するように
はしているのだけれど、それでも、相手の大雑把な感情の起伏くらいは、いつでも心の奥底で感じる事が出来る、というちょっと
特殊な関係だからである。

だからせつなが前より可愛く思えるのも……あるいはそういう見えない部分が影響しているのかなぁ〜と思えなくもないのだが
……でも、逆も又然り、だったらなんだかなんだか……いまいちだなぁ……

うん、きっとこれはそれとは関係ないんだろうな。

でもそのこととは関係なくは、元々かなたと自分の思考(趣向?)はちょっと似て……

「あ、あれ………」
「ん?」
「い、いや……」

すんごい激しく切られているな。


なんだなんだ?


なんなんだ〜〜〜??


「断線してる……」
「でしょ〜?はるかもでしょ〜?」


”なんだか分らないけど喧嘩になった。”

それが今回の呼び出しの内容だった。

しかしいかんせん、年中行事のように怒ったり怒られたりの二人なので、これはこの二人の性格上、仕方がないのかな、と半分
以上諦め&慣れてもいるはるかだった。

だから今回も、二人の恒例の痴話喧嘩なのかな?と思ったのだが、その割にはちょっぴり雰囲気が違うことと、今はここから動
けない、というせつなの為に、(天王星から)はるかはやれやれ、という思いを抱えつつも、愛する兄姉の為に自らこちらに来た
のだった。

しかし、首を傾げて「む〜ん」とした表情で、それでも仕事はきちんとこなしているしているらしいせつなの様子は、例えそれが良
くある情景だったとしても、やっぱりちょっぴり不憫に思えたはるかだった。


「確かに……変かな……んでも、喧嘩はしちゃったんだろ?」
「も〜なんだか率直に言われすぎてていやだわ」
だって自分がそう言ったんじゃないか……(溜息)
「でもべつに、私達だっていっつもいっつも喧嘩ばっかりしているわけじゃないのよ?」
「そらそうだ」

もっとも、みちると自分ではそもそも喧嘩にならないので、不思議といえばちょっぴり不思議な二人なのだけれど。(でも、ある意
味楽しそうかなぁ〜と、思うこともあるのだけれど。)

「でもね、あれは向こうがふっかけてくるから返しちゃうだけなのよ」

かけ……るな、あれは……(そんでもってせつなも……かけがちなんだよな。)

「いやでも、かなの場合は要するに、単にせつなのことを構いたいだけなんじゃない?」

おかげで自分は楽になったけどね……適度に寂しいかと思う程度に………とか思うと次回逢った時が怖いので、それはまぁ置
いておいて……

「けどさ、なんか解せないな。せつなはともかく」
「ちょっと、それってなんなのよ?」
「まぁまぁ」
あぁもう短気なんだから〜
「とにかく、「単純に・物理的に」なんだけどさ、どうして俺まで無視なのかな……」
「どうしてだと思う??」
「それが分らないんだよなぁ……気持ち悪いなぁ……」
「でっしょ〜〜〜〜〜???」
「な、なんだよお前〜」

急に元気になるなよ驚くじゃないか。

「私はともかく、はるかからまで逃げるって一体なんなのよぉ!」

ぷんぷん、という感じで怒ってはいるのだが、ここは時空の扉の真ん前だったりする。
背後はまだしも、現状の空間の薄暗さを差し引けば(?)まぁそれなりになんとなく……学生がこう、公園とか校舎の端で内緒話
をしているようなか………なんか違うな。

「いやでもせつな、俺はともかくせつなから逃げたらあかんのではないか?」
「ううん、「私はともかく」でいいの」

だめだこりゃ。
せつなに言ってもこの辺は無駄みたいだが、かなたに言うのもなにか妙だし……
諦めるしか……ないのか?この二人と自分の関係は……
でも、まぁいいか……うむ。(注:そんなに激しく悪い気はしていないらしい。)

「でもね、とにかくそんな調子なの」
「じゃぁちょっと話を整理しましょうね」

「その1、結局何が原因なの?」
「なにって、夕方はこっちに来るかなぁ〜って思ったんだけど、なにも連絡がなかったから、私が連絡をしたの」
「はぁ」

自分もそうだがせつなも、ぶっちゃけていえば、ある意味人柱系なので、そんなにやたらにぽこぽこ現場を離れることは出来ない
のでついついそうなってしまいがちなのだが、自分ならみちる、せつなならかなた任せな部分は多いので、こういう状況はままあ
ることだろう。

「そしたら用事がないなら呼ぶなって言われたの」
「でもせつなは、かなになにかの用事があったんだよね?」
「う〜ん……」
「ま、まぁなくてもみちるなんか呼ぶのは年中だけど」
「うん、今日は私もそんな感じだったの。でも、だからってひどくない?そんな言い方って」
「まぁ……そうだねぇ」

けど、他の人ならそうなることもあるのかもしれないが、なにしろ相手はかなたである。
嫌いな人間ならともかく、そうじゃないならそんなことはめったやたらに言いそうもないんだよなぁ……

「でもね、なんか様子が変だったから、一応気になって」
「ふむふむ」

だよなぁ、なにもなくってせつなのこと邪険にするかなたなら、まずせつなじゃなくて俺がぼこぼこにしてくるよ……

「そしたら、なんにも理由は言ってくれなくって、あげくにうるさいっていうのよ、うるさいって!

みちるが時々そうなんだが……あ、いやってことじゃないんだけど、みちるって声が響くから眠い時とか疲れている時に耳元でわ
しゃわしゃ〜って喋られると、ちょっとこう「黙って〜」みたいな……ことはあるけど……

「……せつなは……うるさいだろうか?」
「ん?」
「いや、みちるが普通に喋っている声とかまゆりの声ってこう、ワンオクターブ上にいるから頭に響くけど、せつなってそうじゃない
からさ」

低いわけじゃないんだけど、高くはないし、どちらかといえばこ〜うしっとり系?なので、喧嘩したら怖くはな……るかもしれない
けど、うるさい感じじゃぁ……ないよなぁ??
ちなみにほたるさんだと、マジ怖いことがあるんだけど。(あ、でもこれは普段でも。)

「でも、とにかくなにかが変なんだけど、あの人ってとにかく、ごまかすのにかけては天下一でしょう?」
「まぁね……あれは確かにそうだと思う」

なにしろこの俺に、自分の正体を何年も隠してた位だからなぁ〜……

「だから、連絡絶たれたからなにかあったのかなぁ、とは思ったんだけど……なんか面白くないし」
「おいおい……意地張ってないで、いけそうなら行ってくれば?連絡は取れないけど、そんなにやばい感じはしないよ?」
「でも、なんかしゃくじゃない。そうまで言われて行くのって」
「ま、まぁね……」

あぁなんというか、変なところで意地っ張りなんだよなぁ……みちるなら即来て確かめる……とかしそうなのに……(この辺りが
みちるとせつなは偉く違うんだよなぁ……)

「けど、その割には気になって居るんだろう?だったらもう一回声掛けてみなよ。今度は違うかもよ?」
「いいやそれはないはずよ!だってあの人意地っ張りだもん!」

要するに似たもの同士ってことか……

「でもさ、そうやって意地張っても気になって気になって仕方がないってんじゃ、ちっともいいことないじゃん?違う?」
「でも、いやなものはいや」

だめだこりゃ。

「じゃぁ一人で悩んでなさい。俺はもう帰ります」

なにやら悲痛な感じで呼ぶので来てみりゃこれなんだもんなぁ〜(苦笑)

「ひどいひどいひどい〜」
「ひどいってあのなぁ……それなら俺にどうしてほしいの?」

あぁいつものことだがね。

年食い過ぎたら、ほんとはちょっぴりだけ年上のはずなのに、なんだか妹ちっくになっちゃってるし。
いやむしろ、本当の妹のみらいよりかわいげがあるというかなんというか……

「じゃぁ見てきて」
「はぁ?」
「じゃぁ見てきて、あなたのこれもお仕事!」
「お前ねぇ」
「いいから行ってきて〜〜〜〜〜っ!」


あぁもうなんだか……


「ちょっと聞くけどせつなちゃん、俺のことをせつなちゃんは一体なんだと思ってるのかな?」
「はるかさんは、ウラヌスさんだと思っているわよ」
「そう。で、そのウラヌスさんはどんな人なのかなぁ〜?」
「ウラヌスさんはチタニアさんのご主人様、だと思っているわよぉ」
「それは確かにそうだけど、俺、おらおらご主人じゃないんだぁ。てか、うち主人の方が身分低くってさぁ〜」
「でも、部下の責任は上司がとらなきゃ」



どうやっても俺を動かす気なんだな……この人は。



「ならせつなちゃんも、自分の旦那の手綱は自分で取ろうよ」
「みちるちゃんみたいに?」
「そうそう……っておい、それはいやみかいな」
「違った?」


違わ………ない、かも?


「でもせつな、あれでもかなた、せつなには俺より甘いと思うぞ?」
「う〜ん……どこで比較すればいいのかよく分らないわ……」
「どこでっていうか、どこもかしこも?」
「どこかははるかに対しての方が甘いと思うけど」
「屁理屈いわんでいいから」
「屁理屈違うわ。事実よ」


あぁ螺旋階段みたいな会話だ……









「分った」
「え?」
「もう分ったから終りのない会話は止めよう」
「………?」
「俺が様子を見てくるから。そんなに連絡取れないなら、それはそれで気になるし」

生きているのは分るんだけど。

「ちなみに、連絡取れなくなってどの位?」
「一日……えっと、24時間はないかしら?」

なんかいっそかっこいいぞ〜……
うち、その3倍くらい連絡取らないこと時々あるし。




「じゃぁちょっと待ってろな」
「うん、信じてるわ(にっこり)」

「はいはい」

素直なのはいいことなのだが……もっと別な部分でも素直になりなさい……ね。





そしてまた、続く。

ところで、せつなとはるかは仲が良いです。
普通になんというか自分の中で、自分のうちの子は、
双子の兄妹のような感じです。
(はるか兄、せつな妹、らしい。しかも)

だからドールも同じタイプで……というのは余談ですが
どこか似ていて、どこか似ていなくて
二人だからこそのなにか共通したものがあり。
そうしてそんな二人だからこそ、かなたが揃って構いたくなる。
気付けばうちではそんな構図が
いつのまにやら出来上がっておりました。



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